このブログは、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所の金正勲ゼミのメンバーによるブログです。

水曜日, 12月 06, 2006

2006年コンテンツ政策三大ニュース:私的観点から

寒さが身にしみるようになり、2006年をふりかえる季節となりました。
今回は、金ゼミ員各自の観点から、2006年のコンテンツ政策三大ニュースを検討します。
私は、自分の実感の持てる範囲のインパクトの中から、コンテンツ政策への影響が大きいと考えるニュースを選びました。

1.欧米メディア業界の激動
今年はGoogleがYouTubeを買収したことが大きな話題となり、インターネットでもいよいよ動画が重要になるという見方が一気に強まりました。「放送と通信の融合」という言葉も注目されましたが、それは単純にTVとネットが融合するということではなく、伝送路で区別することの意味が薄れるという風に私は解釈しています。メディアという伝達手段が多様化し、変化していく中で、コンテンツの需要も変化したり、新たな形式が生まれたりする余地があると感じています。
利益の見込みが薄くとも、欧米の大手メディア企業がインターネットへと真剣に取り組んでいることを見ても、ネットがもたらす新しい可能性の期待が高まっていると言えます。
これは、コンテンツの流通経路に関する変化だと考えることができます。

2.Web2.0本格化
Web2.0がbuzzwordかどうか、バブルがはじけるのか、その細かい内容は何なのか、などが話題となりました。しかし、細かい内容ではなく、その示唆する方向性に意味があり、その意味する流れは大きく間違っていないと考えています。
SNS、CGMなどで個人の可能性の拡大、権力移譲は確実に起こっています。そして、この世代の人々の価値観まで大きく変化させています。また、コミュニケーション手段・技術が多様化し、今まではただ消費するだけだった一個人が、評論したり、新しく何かをつくりだすようになっています。十万人にとって意味のあるコンテンツでなくても、自分の周りの十人にとっては大切なコンテンツを生み出し、届けることが可能になっています。
これは、コンテンツの生産手段が拡大しているだけでなく、レイヤー間(生産・流通と伝送)の関係性も変化させつつあると考えることができます。

6.著作権論議の高まり
以前に、コンテンツ政策フォーラムで、DRMがコンテンツの流通にとって有意義なものかどうかという議論がされていたように、コンテンツ政策にとって著作権問題は特に重要なニュースです。ここ数年の議論が、今後の市場の成長、考え方の軸の変化にとても大きな影響を与えるからです。
インターネットが普及し、上記のようにコンテンツの生産・流通部門が大きく変化している中、現行の著作権制度が十分に機能しているとは言いがたいと思います。
著作権については詳しくないのですが、より柔軟で、時代にあった制度設計を行い、コンテンツの需要を伸ばすことで、生産者側と流通者側の双方に大きなメリットが生まれる余地があると考えます。