このブログは、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所の金正勲ゼミのメンバーによるブログです。

土曜日, 6月 24, 2006

今週のNC -映画について-

読売朝刊 6月14日 「映画「海猿」大ヒット ドラマとの連動に新機軸 目立つTV局主導」

(要約)
-海猿をはじめとし、ヒット中の映画の多くをTV局が制作・企画している=娯楽性+ヒット重視
-が広範囲にウケる内容を狙うこともさることながら、TV局は宣伝力が半端じゃない。
彼らの手法は『映画のイベント化』:公開にあわせてドラマ再放送や旧作映画を放送、自社のTV番組にも映画の出演者を頻繁にあわせて登場させる。ぐわっと話題性を高めて「旬」にさせるのだ。
-これは戦略として◎だが、多くの問題を含む
①TVでPR作戦をするのは公共の電波の使い方としてどうなのか=公共性への疑問
②映画は映画にしかできないもの、TVにはTVにしかできないものがかつてあったが、いまはその垣根がない。=魅力が減る
③TV局などの宣伝力あるものが上位(20/731本 昨年データ)になり、ほかの作品(700/731本)が全然日の目を浴びない=映画産業における二極化

(感想)
-コンテンツの多メディア展開
これはコンテンツを広告をする側にとっては効率的な手法で、認知度をあげるために良い。が、多様性がそこなわれ、結局どこみてもコンテンツが同じ、という状況になりかねない。
例)純愛ブームはここ1、2年で爆発的にどのMEDIAでも盛り上げられている:せか○ゅー、電○男、YONさま、頭の中の消しゴ○、博士の~などなど。全部似たり寄ったり
-下位に属する作品
大衆的で旬な映画作品が上位を占めるのは仕方ないが、下位に存在する宣伝力がそれほどない映画製作会社がつくった良品で個別的な映画があるのならば、それらを救済するような戦略がどこかにあってもいいはずだ。
例)あくちゃんが連れていってくれたバンダイビジュアルは、質が高く色あせない良品の邦画の製作&パッケージ化に力を入れています。
受賞作品→http://www.bandaivisual.co.jp/company/chronicle2003_2004.html
-映画というもの
映画がこのままもし本当にTV局に呑まれてしまったら、それはただ単にTVに普段映るものが映画の大スクリーンに移っただけになる。現に、海猿も、踊る大走査線も、トリックも、飛躍的に新しい内容ではなく、あくまでもTVドラマの内容に沿ったものだ。個人的に映画に行く醍醐味は、それまで経験しなかったような新しい衝撃を受けるためで、そのような映画をつくる人たちには確固とした熱意と意志が映画全体に貫徹しているのが感じられる。決して万人ウケしないけれど芸術作品のような映画は、大衆向けのTVコンテンツと一線をがす。小粒だけど深い良品が好きな私は、「商業用TV系映画」の波が収まることを願っている。(それなりに面白いけどね、TVドラマに沿った映画も)