このブログは、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所の金正勲ゼミのメンバーによるブログです。

火曜日, 6月 27, 2006

大井あゆみさんのResume

第1部 「ハイコンセプト(新しいことを考え出す人)」の時代

1.なぜ、「右脳タイプ」が成功を約束されるのか
2.これからのビジネスマンを脅かす「3つの危機」
3.右脳が主役の「ハイ・コンセプト/ハイ・タッチ」時代へ

<1部の概要・概念>
経済のグローバル化・アウトソーシングにより「M型社会」になる
(現状に関するkeywords:豊かさ、アジア、オートメーション)
①「よその国、特に途上国でできること」は避ける
②「コンピュータやロボットにできること」は避ける
③「反復性のあること」は避ける
⇒従来の左脳型ホワイトカラーの危機
 ⇒創造性(イノベーション・クリエイティブ・プロデュース)という能力が必要不可欠
 ⇒「右脳主導思考」「ハイ・コンセプト、ハイ・タッチ」の資質を身につけ、「突出した個人」になるべし

「右脳主導思考」
・左脳は「逐次的」に処理し、右脳は「全体的、瞬時に」処理する
  →右脳は複数の要素を同時に見て全体を把握する、理解することができる(ex.表情)
・左脳は「文」を、右脳は「文脈」の処理を得意とする
  →左脳は「何が」話されたかを扱い、右脳は「どのように」話されたかを扱う
・左脳は詳細を分析し、右脳は「大きな全体像」としてとらえる
 
「コンセプチュアル社会」の到来
そのためには…自分とは全く対極的な人とも語り合って物事を創造していく工夫を。
なぜなら、グーグルで検索できる知識は基本的に無料で価値がない。
みんなの意見をたくさん聞いてそれを消化した上で、「自分はこう思う」という仮説を立てて仕事をできることが重要。
「処理能力」より「創造力」、「技術マニュアルで得られる知識」より「潜在的知識」、「細かい部分にこだわること」より「大きな全体像を描く能力」がますます必要に。

「ハイ・コンセプト」:
パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しいものを構想や概念を生み出す能力、など
「ハイ・タッチ」:
他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また他の人が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力など  
  
<感想>
 最近なんとなく言われてきていたことが、1冊でクリアにまとめられていると思う。また、右脳だけが重要、左脳が論理的で全く必要ないというような誤解を招かないように細心の注意を払って書かれていると感じた。
 それぞれの領域の知識をただ増やすだけではダメだというのは、以前からゼミで繰り返し言われてきていたことで、同意できる。しかし、分野を統合して全体を見なければならない、創造性が大事、という流れに気づいている人がどれだけいるかは不明だ。未だに日本では資格信奉が強いが、今後10年以内には確実に大きな構造の変化が起こると思う。特に日本では大前研一さんが訳したことによって、この本への注目が高まったのではないか。アマゾンの書評を見ても、「情報時代」から潮流が変わったと指摘する声は大きい。
 まともな給料をもらってよい生活をしようと思った時に、機械のように単純作業を繰り返さなければならないのではない、という点は良いことだ。しかし、個人がそれぞれ「新しいこと」を考え出す時代になるというのは、いろいろなダイナミックな動きがあって面白い反面、恐い部分もある。それが恐いからこそ、今努力するのだろう。
 本書で指摘されているようにいくら創造性が大事になっても、考えているだけで何も行動しない、「ハイ・コンセプト」なアウトプットのない人はダメなのだと自分をいましめたいと思う。

<論点・ポイント>
・ どれほどの速さで「M型社会」は到来するのか。ほんとにそうなるのか?(人々は既得権益を守ろうとするし、それを破ろうとする者がルールを破ったりする)
・ モーツァルトを聞き、人と話し考えることでしか右脳主導思考は鍛えられないのか?
・ 介護ロボットや絵を描くプログラム(AARON)などが生まれていて、コンピュータの侵食は著しいが、人の心を動かす中身、分野の統合などの新しいことは当分コンピュータにはできないだろう。