このブログは、慶應義塾大学メディアコミュニケーション研究所の金正勲ゼミのメンバーによるブログです。

火曜日, 5月 02, 2006

昨日のLecture概要

金ゼミの皆様
昨日はお疲れ様でした!ほぼ朝まで生テレビ状態でしたね(笑)
皆さんの無限なポテンシャルを再確認する良い機会になりました。

さて、昨日最初の30分間お話した内容を以下簡略にレビューしてみます:

■政策的前提と政策の変化
全ての政策は何らかの政策的前提に基づいて策定される。政策的前提が変化する時、既存の政策の正当性は失われ、政策の変化が必要となる。特に、情報通信分野のような技術の変化が激しい分野ではその変化をタイムリーに考慮した政策策定が求められる。

■政策的タイムラグ
社会経済システムが技術、市場、社会、政策の四つの変数間での複雑で有機的な相互作用の結果であるとしたら、情報通信分野では一般的に技術が先行し、市場、社会、政策が後追いする構図が出来上がる。その時間差をタイムラグとすれば、技術や市場の動きに対し、ある程度の政策的タイムラグが発生するのは仕方なく、それはある意味望ましいことでもある。ただ、問題は如何にその政策的タイムラグを最小化するかという点である。政策的タイムラグが大きすぎた場合、技術や市場が持つ潜在的可能性を引き出すのに政策が障害として作用するリスクがある。

■基本的な政策スタンスと不確実性
ヒエラルキーに基づく中央集権的なスタンスを取るか、それともマーケットに基づく自律分散的なスタンスを取るか。この基本的な政策スタンスの選択においては数多くの変数が考えられるが、中でも最も重要な変数として「不確実性(uncertainty)」と「予測可能性・能力(predictability)」が挙げられる。つまり、将来に対する不確実性が低く中央政府の予測能力が十分に大きい場合は、中央集権的な政策スタンスがより有効で(日本の大量生産時代)、逆に将来に対する不確実性が高く中央政府の予測能力が小さい場合は、自律分散的なマーケットメカニズムがより有効である。それを説明する要因としては中央政府と民間主体間での「情報の非対称性」といったものが考えられる。

<参考文献>
Hiearchy, Market, Networkなど世の中がどのように組織化されているのか、という調整メカニズム(coordination mechanism)について関心がある方は下記の論文を読むことをおすすめします:
Walter Powell (1990) Neither Market nor Hierarchy: Network Forms of Organization. Research in Organizational Behavior 12:295-336